ブルックナー:交響曲第7番、モーツァルト:『プラハ』(2CD)シューリヒト&ベルリン・フィル(1964年ザルツブルク)カール・シューリヒトとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との1964年ザルツブルク音楽祭でのブルックナー交響曲第7番の録音は、非常に価値の高いアーカイヴである。「もし、永遠が口をきいたとしたら、このように聴こえるに違いない。」ブルックナーの交響曲第7番に関する熱烈な賞賛をこのように記したものがあるが、シューリヒトの演奏はまさにそれを具現化している。個々の手法ということではなく、音楽作りそのものが、1884年12月ライプツィヒで初めてこの作品が演奏された際の演奏方法に由来しているからだ。 このライプツィヒでの初演は、29歳だったオーストリア=ハンガリー帝国出身のアルトゥール・ニキシュ(1855-1922)によって行われた。この演奏は、ブルックナーのキャリアにおいても画期的な出来事であった。作品とその評価はヨーロッパ中に知れ渡り、それまで世界中がーより正確に言うならば、ウィーンがー拒絶してきた作曲家を一転して認めるに至ったのである。この時、ブルックナーは60歳だった。 その頃、ニキシュはハンス・フォン・ビューローよりベルリン・フィルの首席指揮者の地位を引き継いだばかりで、ブルックナーの交響曲第7番は彼の「十八番」となっていった。作品は、まだ富裕層に受け入れられたとは言い難かったが、ニキシュが紡ぎ出す弦楽セクションは秀逸で、彼特有の大胆さはなかったがかなり自由なテンポが設定された。 ベルリン・フィルがこの交響曲を初めて録音したのは、1928年、当時まだ29歳だったヤッシャ・ホーレンシュタインとであった。指揮ぶりは歯切れがよく、演奏も見事であり、この作品にとってもベルリン・フィルにとっても名声を広げる好機となった。 1930年1月号のグラモフォン誌においてリチャード・ホルトは次のように述べている。「この交響曲が傑作であるという私の意見にご賛同頂けない方がいらっしゃれば、批判を承知で‘その人は音楽を知らないのだ’と言い切ってしまうだろう。この交響曲は荘厳な作品であり、一旦好きになればその人の偉大なる預言者とも、最も印象深い聖書の一節ともなり得るだろう。」 10年後、ポリドールは58歳だったカール・シューリヒトとベルリン・フィルとでこの交響曲の再録を行った。第1楽章と第4楽章がゆったりした新しい版が使われた。テンポとオーケストラ構成という意味では、今回リリースとなる1964年のザルツブルク音楽祭での録音とこの時の録音はそれほど違ってはいない。とはいえ、スコア解釈が凝り固まっていたという意味ではない。構成の解釈だけは確立していた。この解釈は、指揮者自身の作曲法の鍛錬と実際のコンサートホールでの実演を通した経験により確立されたものである。 ベルリン・フィルが初めてブルックナーの交響曲第7番を演奏したのは、1922年、フルトヴェングラーの指揮によってである。ちょうど、ニキシュが死去し、フルトヴェングラーが後任となった年であった。対照的に、フルトヴェングラーの後継者となったヘルベルト・フォン・カラヤンは就任後9年間もこの交響曲を振ろうとはしなかった。(その間、カラヤンがまったくこの交響曲を演奏しなかったわけではない。ウィーン・フィルとは演奏している。)カラヤンは、彼自身が招待したザルツブルク音楽祭でシューリヒトが第7番を指揮する僅か1ヶ月前にベルリン・フィルでこの交響曲を演奏している。これは単なる偶然ではない。クリーヴランドのセル同様、カラヤンも一流のゲストを招く前には、自身のオーケストラを最高の状態に保つことに余念がなかったのである。 ベルリン・フィルは1964年のザルツブルク音楽祭において5回のコンサートを行っている。指揮はカラヤン、メータ、サヴァリッシュ、シューリヒト、そしてセルであった。その中でも、シューリヒトのコンサートは忘れかけていた黄金時代を現代に蘇らせたとして脚光を浴びた。これは弦楽パートによるところが大きい。シューリヒトが目指した“いかにして正しい表現と完璧なレガートを得るか?”という命題を具現化するため19世紀後半から20世紀前半の偉大なる指揮者たちの試みが再現された。(フルトヴェングラーがカラヤンを称賛した唯一の言葉は“彼は本物のレガートを創造する方法を知っている。これが音楽において最も難しいことなのに”である。)シューリヒトは彼独特の方法で弦楽パートを強調している。しばしば弦楽器パートをより細かく分け、それぞれに別のボーイングを指示し、特に主題と関係の深い長いフレーズを持続させるといった手法をとっている。交響曲第7番の有名なアダージョにおけるオーケストラの構成を聴Disc11 : Mozart: Symphony No. 38, K. 504: I. Adagio - Allegro [9.59]2 : II. Andante [10.21]3 : III. Finale: Presto [4.12]Disc21 : Bruckner: Symphony No. 7: I. Allegro moderato [20.37]2 : II. Adagio: Sehr feierlich und sehr langsam [21.03]3 : III. Scherzo: Sehr schnell [8.55]4 : IV. Finale: Bewegt, doch nicht schell [13.07]Powered by HMV