運命を管理する神様の手違い(うっかり)で、林檎としてフレッシュな異世界転生を果たした古津大輔(33)。たわわに実った林檎のひとつとして転生したフルツは、手も足も出ず、まさに万事休す。神様からお詫びでもらった最強のチート能力も、林檎の身ではまったく役に立たない。夢も希望もない転生に嘆くフルツの脳裏に、不思議な少女の声が響く。それは神から授かった手違いのお詫びである五大能力カードのひとつ「倉庫のカード」に収納されていた意志を持つ世界樹の杖、「グリダヴォル」の声だった。倉庫に収納されている杖であるグリダヴォルの声は、フルツだけにしか届かない。閉ざされた世界の中で、林檎と杖の不思議な交流が生まれていくーー。道中、なりゆきで命を救った魔法の使えない魔法使い志望の少女・フレッサの冒険者試験に巻き込まれていくフルツとグリダ。すったもんだの展開がありながら、なんとかフレッサは最終試験にコマを進める。最終試験は実地試験。実際の冒険をこなし、その内容で合否が決まる。フレッサが配属された第三班の最終試験の会場は「傾国の大穴」。その昔、一国を滅ぼした魔物が棲むとされる逸話のある場所だ。しかし現在は魔物の影もなく、会場はなんとも緊張感のない行楽地と化していた。これはフレッサの身を案じるホルマーが裏から手を回し、危険のない目的地を割り振った結果だった。このまま何もなく洞窟の探索が終われば、試験は合格。楽勝ムードが漂うパーティーの前に、洞窟内を荒らす盗賊まがいのパーティーが現れる。彼らは爆弾を使い、壁を壊し洞窟内の財宝を集めて回っていた。ホルマーの警告を無視し、彼らは次々に大量の爆弾を使う。すると洞窟が崩落、フレッサたちも巻き込まれ下層へと落下してしまう。落下した先は、大量のセデルたちの巣だったーー!盗賊パーティーたちは次々にセデルに襲われ、その身を餌とされていく。突然のことに何もできず凍り付くフレッサたち。ホルマーに激を飛ばされ、フレッサたちは上階を目指して撤退をすることになる。大量のセデルを足止めするため、ホルマーはただひとり死地に残る。ホルマーを残し、上階を目指すフレッサたちだったが、上階への階段は殺到する冒険者たちで渋滞を起していた。足止めを食らうパーティーからそっと抜け出し、フレッサはフルツを携え、階下で戦うホルマーの元へ戻る。惨劇の痕を残す現場にたどり着いたフレッサたちは、セデルたちに捕らえられたホルマーを発見。フレッサの見ている前で、ホルマーは腕を喰いちぎられてしまうーー!激高したフルツはセデルたちを火の魔法で焼き払う。そして瀕死のホルマーに対し、フルツは末期の水代わりに自身を差し出すのだった。ホルマーはひと口フルツを口にすると、突然活力を取りもどす。フルツとホルマーはその身は光に包まれ、復活を果たした。しかもホルマーは全盛期の身に若返りを果たしていたのだったーー!アンチエイジング復活を喜ぶ一行の前に、彼らの前に「傾国の大穴」の女王が現れるーーー!