企画以上に演奏の素晴らしさに脱帽、雄弁な弦楽四重奏による表現の極み!バッハとヴェーベルンの音楽が未だかつてないほど力強く迫り来る!バッハは20世紀の作曲家からも偉大な対位法の権威として認識されていました。ヴェーベルンも例外ではなく、『バッハにはすべてが含まれている』 とさえ評しています。このふたりの作曲家を並べて、隠れたつながりを浮き彫りにしようという企画。 『フーガの技法』はバッハ対位法芸術の総決算であり、たったひとつの主題を使ってあらゆるフーガの可能性を網羅していく作品。最高度の作曲技術を用いながらも、人間的な感情を否定することなく精神的な高まりのある音楽を展開。未完となった最終フーガでは大きな抑揚をもった歌と精緻極まりないフーガが結合され、絶筆箇所の直前には『BACH』 音列の主題が登場します。 ヴェーベルンは寡作ながら、生涯を通して弦楽四重奏のための作品を書きました。伝統的な編成と対位法技術を用いつつ、無調の世界に無駄を削ぎ落した最低限の音符を並べていく独特のスタイルは、繊細であると同時に力強くもあり、理論のみで語り切れない音楽の在りようはバッハと通じ合うものがあります。最後の室内楽曲である『弦楽四重奏曲 作品28』は『BACH』 音列を含む12音技法で書かれた作品。 『フーガの技法』を曲種ごとのセクションに分け、ヴェーベルンの作品を年代順に挟み込んでいく構成で、全曲をガット弦で演奏。近い音色で奏でることにより、ふたりの親近性が如実に表れてきます。バッハも基本的には弦楽四重奏編成で、楽曲の音域に合わせてヴィオラを2本にし、曲によってはヴィオローネやチェンバロを追加。 企画のみならず、演奏の素晴らしさが特筆もの。各パートが実に活き活きと歌われています。ここまでバッハとヴェーベルンの音楽が力強く迫ってくる演奏はそうありません。もはや時代そのものがステレオ効果で迫ってくるような強烈な存在感を放つアルバムです。CDジャケットに用いられているのはシェーンベルク画『思考』。(輸入元情報)(写真 輸入元提供)【収録情報】● J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080〜コントラプンクトゥスI-IV『基本フーガ』● ヴェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章 Op.5(1909)● J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080〜コントラプンクトゥスV-VII『ストレッタ・フーガ』● ヴェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9(1913)● J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080〜コントラプンクトゥスVIII〜XI『2重・3重フーガ』● ヴェーベルン:弦楽四重奏曲 Op.28(1937-38)● J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080〜コントラプンクトゥスXII, XIII『鏡像フーガ』● J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080〜コントラプンクトゥスXIV『未完の4重フーガ』 ロドルフォ・リヒター(ヴァイオリン) リヒター・アンサンブル 演奏ピッチ:バッハ A=415Hz、ヴェーベルン A=432Hz 録音: 2019年6月30日〜7月3日 フランス、ヴィレノア、小教区教会(バッハ) 2021年8月31日〜9月1日 フランス、ナンテュイユ=シュル=マルヌ、聖マルガリタ教会(ヴェーベルン)【ロドルフォ・リヒター】イギリス/ブラジル出身のヴァイオリニスト。ピンカス・ズッカーマンらにヴァイオリンを学んだ後、モニカ・ハジェットのもとでバロック・ヴァイオリンを学んだ。2000年にブルージュで開催されたアンサンブルのための国際古楽コンクールで入賞、2001年にアントニオ・ヴィヴァルディ国際ヴァイオリンコンクールで第1位を獲得。エンシェント室内管弦楽団、ビー・ロック・オーケストラでコンサートマスターを務めたほか、ターフェルムジーク・バロック管、セビリア・バロック管、エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団、パラディアン・アンサンブル、フロリレジウムなどで演奏。20世紀初頭の室内楽への愛情から2018年にリヒター・アンサンブルを創設。異なる時代の作品の隠れたつながりを探ることを目的に、バッハ/ヴェーベルン、シューベルト/シェーンベルク、ルベル/ペルト、ヴィヴァルディ/ライヒ/リゲティといった多彩なプログラムを発表している。現代音楽作曲家としても活躍しており、ブーレーズに習い、ノーノ、カーターらのマスタークラスに参加経験がある。(輸入元情報)Powered by HMV