都電の場合は、他都市に比べていろいろな面で山の手と下町の相違が大きく、それが都電の系統による性格の違い、利用客層の違いなどとなって表れていました。庶民性という点では何と言っても下町路線が勝っていて、都電の世界は下町にあったと言っても過言ではありません。山の手でも都電は移動手段の1つとして利用されていましたが、下町では生活の一部にしみ込んだ存在、無くてはならない存在になっていました。これは都電なき後の都営バスが、今なお下町では需要度が高く、山の手とその郊外では大半が廃止された現状を見てもわかります。本シリーズは系統番号順に巻を追っていますが、系統の付番の基準から、おのずと山の手からスタートし、次第に下町に進む(降ってゆく)構成となっています。この伝で進めて行きますと、この第5巻は純然たる下町を走った系統を紹介する最初の巻ということになります(山の手の路線にも下町路線に相当する例外的な系統番号はありますが)。この第5巻では山の手から下町への入門編ともいえる1920系統、生粋の下町路線だった2122系統を取り上げました。都電が走った時代の東京をぜひお楽しみください。