大和花道いけばなの家元・下田尚利の作品集と論集を一冊にした2部構成の集大成。下田は、大和花道の「いけるという行為は、いま私が手に把ったこの花との一期一会の出合いを、いかに深く楽しむかということに盡きる。いけあがった結果を他者に伝えることも大切だが、それ以上に、いける過程で、どれだけ自由に、大胆に、緊張に満ちた花とのやりとりを押し進めていけるか。」という流派の根本理念を家元として受け継ぎつつも、表現者として時代時代で「いま」のいけばなを追求しつづけてきた。後半の昭和・平成を俯瞰する論集はいけばな史の貴重な資料となっている。本書は、ひとりの作家の作品集であると同時に、いけばな史の渦中で花を追求してきた表現者の軌跡である。