クレンペラー&ベルリン・フィルベートーヴェン:交響曲第5番&第4番クレンペラーのベルリン・フィル・デビューは1921年。カラヤン黄金期のインテンダント、シュトレーゼマンをして“向こう見ず”と言わしめたオール・シェーンベルク・プログラムでした。なんと、かのクレンペラーが客席の咳がやむのを5分待つことを余儀なくされたとか!それでもシュトレーゼマンはこう振り返ります。若き日から、クレンペラーの求める音はベルリン・フィルがかつて奏でてきた音と違っていたと。戦争によってヨーロッパを離れたクレンペラーでしたが、その間も彼の名声が途絶えることはありませんでした。46年、彼は大西洋を渡り帰ってきます。 その後、ヨーロッパ中の楽団、オペラ・ハウスから引っ張りだことなるクレンペラーですが、BPOとの共演はそれほど頻繁ではありません。1948年にマーラーの第2番と第4番、1954年にブラームスのハイドン変奏曲、ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ、ベートーヴェン第7番、1958年には、シュトレーゼマンが「尋常ならざる経験。強制されることなく、カンタービレを彼ら自身の調和で満たしてしまった」と驚愕したというブルックナーの第7番がありました。これらのコンサートは、放送スタジオであったティタニア・パラストとベルリン・ホッホシューレ・ザールにて行われましたが、1964年には、フィルハーモニーザールが完成。高い評価を得ることとなった『田園』(SBT2 1217)のコンサートがとり行われます。 当アルバムで聴ける1966年のコンサートでは、ベートーヴェンの交響曲第5番と第4番、それに『レオノーレ』序曲第3番が演奏されましたが、残念ながら、『レオノーレ』の録音は現在残されておりません(以前、海賊盤は出ていましたが)。 娘ロッテの日記によると、リハーサルでクレンペラーはダイナミクスの段階を確認するために(特に p )頻繁にオーケストラを止め、木管のバランス(これはクレンペラーのベートーヴェンの最重要な特質ですが)を是正したとのこと。後にクレンペラーは、チューリッヒの友人に手紙を書き、当夜の演奏に深く満足した旨を述べています。 実際、演奏は非常に優れたもので、モノラル録音で聴いても各パートがきちんと確認でき、立体的なパースペクティヴを感じさせるのはさすがクレンペラーならでは。まだ完全にカラヤン色に染まっていなかった頃の骨太で逞しいベルリン・フィルの響きも立派なもので、常に明確に聴きとれる木管楽器の妙技、抑えた色調の美しさがとても印象深い仕上がりです。一方で、強大な金管セクションとティンパニ、コントラバスの織り成す鋭利でマッシヴな迫力サウンドも聴きものといえ、ウィーン・フィルではまず味わえない筋肉質な響きが、クレンペラーの描くハードなベートーヴェン像をいっそう引き立てることに成功しています。もちろん、解釈は隅から隅までクレンペラー色に染め上げられており、第5交響曲第1楽章展開部でのディミヌエンド処理や、再現部でのファゴット指定遵守などはいつもながらのクレンペラー。これはやはりすごい第5です。 順序が前後しましたが第4交響曲も素晴らしい演奏です。この作品ではリズム動機の精緻な扱いと旋律美の巧みな表出が求められますが、クレンペラーはここで最良のバランスを獲得しています。木管セクションと弦セクションが交錯する独特のオーケストレーションも、クレンペラーの場合、基本的に木管楽器を重視する設計のため非常につながりがよく、それゆえ、余計に旋律的部分と律動的部分のコントラストが克明になっているのがポイントです。作品にふさわしい見事な演奏といえるでしょう。ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調作品60交響曲第5番ハ短調作品67『運命』ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団指揮:オットー・クレンペラー録音:1966年10月12日ベルリン・フィルハーモニー・ザール、ライヴ(モノラル)Disc11 : Klemperer, Otto - Sinfonie Nr. 4 B-dur Op. 602 : 1. Adagio - Allegro Vivace3 : 2. Adagio4 : 3. Menuetto: Allegro Vivace - Trio: Un Poco Meno A5 : 4. Allegro Ma Non Troppo6 : Applause7 : Klemperer, Otto - Sinfonie Nr. 5 C-moll Op. 67 Sc8 : 1. Allegro Con Brio9 : 2. Andante Con Moto10 : 3. Allegro11 : 4. Allegro - PrestoPowered by HMV