本書は、初版発売以降の約40年にわたる研究成果が反映された第4版に、未刊の原資料を加えた邦訳新版である。直接の弟子を中心に、同時代の作曲家、演奏家、親しかった人たちなどの証言、楽譜、書簡集などから、疑いの余地のない資料のみを抽出。それらを丁寧に分析しながらピアノ技法とその教育法に対するショパンの考え方を読み取り、それらがどのような音楽的美学的背景から生まれたものかを探っていく。多くの資料に目を通すにつれ、個々の資料の持つ意味がより鮮明に浮かび上がっていくよう、資料類を著者による詳細な注釈とは別に独立した形で提供するという配慮もなされている。「ショパンの真の意図を知りたい」という著者の強い思いから生まれた“ショパン研究の決定版”!第一部 技法と様式■技法の基礎ピアノ技法の定義/毎日の練習で「純粋な」技法を磨こうとする間違った習慣/技法の練習の種類/楽器に要求される性能ーーピアノのメーカー/毎日の練習、勉強の仕方と時間/ピアノに向かう姿勢と手の位置/柔軟性ということ/手首と手の柔軟性、指の自在な動き/腕や肘の受身的な役割/タッチの習熟、耳の訓練、アタックの多様性、レガート奏法の重要性/指の個性と独立性/指を独立させる5指練習/音階とアルペッジョ、親指のくぐらせ方、均等性/運指法の原理としての、音の均等性と手の静止/トリルの練習/オクターヴ、重音、和音/単音とオクターヴの反復音■様式の理論音楽における韻律法と朗唱法、フレージング/ベルカント唱法、ピアノによる朗唱法と充実した響きの手本/レガートとカンタービレ奏法/レガートとカンタービレ奏法に適した運指法/アゴーギク、厳格なリズムとルバート奏法/ルバート奏法と装飾音(即興または記譜された)/ショパンの装飾音の特徴と奏法/演奏が理想とすべき単純さと節度/自然で変化に富んだ演奏/強弱の段階、限りないニュアンスの連続的推移/ペダルの用法/装飾音の奏法/音楽理論の勉強/勉強する曲の形式や特徴の分析/学習計画/エミリエ・フォン・グレッチが勉強した作曲家たち/M.ルボー夫人が勉強した作品/デュボワ=オメアラ夫人が勉強した曲目の一覧表/J.スターリングが勉強したショパンの作品/合奏、連弾、2台のピアノのための作品第二部 ショパンの作品の解釈本書に証言が引用されたショパンの弟子の名簿付録1 フリデリク・ショパン ピアノ奏法草稿付録2 ショパンの弟子や親しかった人たちが注釈を書きこんだ楽譜付録3 弟子や親しかった人たちの楽譜で、運指法や注釈の書きこみがある作品付録4 同時代の人々が捉えたショパンの演奏