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シューベルト交響曲第4番『悲劇的』、ドビュッシー『海』ほかジュリーニ&ベルリン・フィル軽快に仕上げたロッシーニ『セミラーミデ』序曲に始まり、重厚なタッチで描いたシューベルトの『悲劇的』、そしてメインのドビュッシー『海』と、ジュリーニが好んで取り上げたフランクの『プシュケとエロス』というユニークな組み合わせ。共通するのは、どれもジュリーニが得意にしていた曲ということで、カラヤン時代のベルリン・フィルに客演するにあたって、得意のレパートリーで臨んだ気概が伝わる演奏内容となっています。 公演の二日後のDie Welt紙に、ヨアヒム・マッツナーは「ドラマそして究極の感性」と題してこう書いています。「ひとつのメロディーの中でかくも劇的な緊張感と感性を共存させることのできる指揮者をジュリーニ以外に私は知らない。彼の指揮がいかに貴族的で巧妙であろうとも、全てのメロディックなフレーズは3次元的で、対位旋律は単なる付加的なパートではなく、その名にふさわしくきちんと強調された。音楽がその頂点に至るときですらジュリーニの手は基本的に控えめな様子を見せるが、音が不鮮明になったり目立ちすぎたりすることはない。究極の柔軟性、透明感、そして色彩感にあふれるこのジュリーニよる『海』の表現は、ベルリン中のホールを見渡しても二度と聞くことのできない素晴らしい出来事だった」【収録情報】・ロッシーニ:歌劇『セミラーミデ』序曲・シューベルト:交響曲第4番D.417『悲劇的』・フランク:交響詩『プシュケ』〜プシュケとエロス・ドビュッシー:交響詩『海』 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮) 録音時期:1969年2月13日 録音場所:ベルリン、フィルハーモニー・ホール 録音方式:ステレオ(ライヴ)【解説書より抄訳】ベルリン・フィルとの10年間の活動を振り返って、ジュリーニは素晴らしかったと語っている。「ベルリン・フィルが世界の音楽界において卓越した地位を占めていることは誰もが知るところです。このオーケストラは素晴らしい個性を持ち、私は彼らと共に音楽を作り上げる幸運に恵まれました」 このインタビューを行った時点ですでに、ジュリーニが指揮するオーケストラの数は多くなかった。「共演するオーケストラとは互いに良く知り合っています。オケからオケへと転々とはしません。演奏者とは音楽的にとどまらず、人間的にも関係を築きます。互いに親しくなることはとても重要なのです」 音楽を紡ぎだす醍醐味は何かという質問はジュリーニにとっての聖句を引き出した。「音楽は偉大な奇跡であり神秘。たった一つの音符でさえ奇跡と神秘を秘めているのです。その音符は突如現れ、生まれた瞬間に去っていってしまう。指揮していようと、演奏者として音を出していようと音楽に関るすべてに魅了されるのです」 多くのスタジオ録音も残したジュリーニであるが、レコーディングに関しては常に懐疑的であった。1979年にドイツの定期刊行誌「Fono Forum」の取材でインタビューを行った際、ジュリーニは「ある作品を録音するのは、その曲が私の中で熟成し、私の経験に照らしそれができると思えた時です。事を急いではなりません」と語っている。また、(スタジオ録音よりも)コンサートホールやオペラハウスにおける演奏が好ましいとも述べている。録音には完全性という利点があるものの、この強みが障害に転じぬように用心しなければならない。「完全性を目指せば、生きた演奏が失われるリスクを冒すことになります。演奏の自然な息づかいやコンサートホールの聴衆との密着性が失われるのです。聴衆の反応がない録音においては、生きた演奏と緊張感に特に注意を払う必要があることは言うまでもありません」 同じインタビューにおいて、ジュリーニは指揮者の役割についても語っている。自身を主役ではなく、他の演奏者と共に音楽を作り出す楽器を持たない演奏者と捉えていた。指揮者は指令塔として100人もの演奏者に向き合う時、傲慢になったり自信過剰に陥るきらいはないのかという問いに対して、ジュリーニは何のてらいもなく次のように答えた。「モーツァルトやベートーヴェン、バッハといった、この世界と人類を豊かにしてくれた天才たちと対峙していること、そして自分は愛と献身を持ってこうした天才たちに仕える一人の人間に過ぎないことを思い知っていれば、そうした了見は無意味になるのです。Powered by HMV
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