絶賛を受けたホリガー&バーゼル室内管のシューベルト・チクルスの完結編は、人生最初と最後のオーケストラ作品を収録。世界的なオーボエ奏者であり、独自の語法を持つ作曲家であり、そして聴き古された作品から新たな美を見出すことができる卓越した指揮者・・・。ハインツ・ホリガーのマルチ・ミュージシャンとしての多彩な活動は、2019年、80歳の誕生日を迎えて以降も衰えるどころかますます盛んに燃え上がっています。今年(2022年)に入っても自作のオペラ『ルネーア』自作自演盤・初録音、ゲルハーヘルとのシェック『エレジー』、ローザンヌ室内管とのシェーンベルクとヴェーベルンのアルバムなど、重要な録音の発売が相次いでいますが、この秋ソニー・クラシカルからは、世界的に高く評価されたバーゼル室内管とのシューベルト・チクルスの完結編となる1枚が登場します。現在のホリガーがシューベルト作品の演奏をライフワークのひとつとして考えていることは明白で、その成果として実現したバーゼル室内管との交響曲全集は、2021年度レコード・アカデミー賞の特別部門(企画・制作)を受賞しています。 当アルバムの収録曲は3曲で、シューベルトが10代の時に書かれた意欲作『序曲ニ長調』、死の年である1828年に書かれたニ長調の交響曲のスケッチからスイスの作曲家ローランド・モーザーが3つの楽章を演奏できる形にした『交響曲ニ長調』、そしてガブリエル・ビュルギンが4手ピアノのための大作を九重奏用に編曲した『グラン・デュオ』という異色のカップリングです。 序曲についてホリガーは「信じがたいほど輝かしい音楽。最初のオーケストラ曲でこれほどまで見事な作品を書いた作曲家は他に知らない。演奏するのは難しいが、何年にもわたってシューベルト作品を探求し、様々な発見を続けてきたこの時期に録音できたのは嬉しい」と語っています。また『交響曲ニ長調』は、シューベルトが1827年3月のベートーヴェンの死に影響を受け、自分が亡くなる1828年11月までの1年半ほどの間に作曲家として著しい深みを加え、「全く新しい世界」を志向していた姿を刻んだ音楽が含まれています。ホリガーはこのモーザーの編曲を「架空の交響曲を作り出そうとするのではなく、いわば『交響曲を夢見る』ことに近い。過去の作曲家がやって来たような、断片的な音楽を隙なく貼り合わせて完全なものにするのではなく、それらを開かれた形で提示することで、最晩年の作曲家が構想していた音楽のデリケートさを聴きとることができる」と評価しています。『グランド・デュオ』の編曲を手掛けたビュルギンは、コダーイ、ムソルグスキー、ストラヴィンスキーらの作品を学校で慧能できるように様々な楽器の組み合わせで編曲しているスイスの音楽家で、ツーク・カンマーゾリステンのシュテファン・ブーリの依頼でシューベルトの4手のための大作を管楽四重奏+弦楽四重奏+コントラバスという9つの楽器のために編曲しました。ホリガーは「この曲の対位法やリズムは非常に大胆。9つの楽器という編成によって、(ヨアヒムが編んだような)大オーケストラで演奏するよりも、そうした要素がずっと鮮明になる」と編曲の価値を認めています。 何年にもわたる発見と経験の末、ホリガーとバーゼル室内管は、シューベルト作品の本質を突く明解さと端正さをもって、音楽のもつ未曽有の価値を十分に引き出しています。(輸入元情報)(写真 輸入元提供)【収録情報】● シューベルト:序曲ニ長調 D.12● シューベルト/R.モーザー編:交響曲ニ長調 D.936a(1828年晩秋のスケッチを基にオーケストレーションを施し演奏可能にした3つの楽章のみのフラグメント) 第1楽章:アレグロ(2020年編曲) 第2楽章:アンダンテ(オーケストラのための断片的音像 1982年編曲) 第3楽章:スケルツォ(弦楽五重奏のための 2020年編曲)● シューベルト/ビュルギン編:4手ピアノのためのソナタ ハ長調 D.812『グラン・デュオ』(9つの楽器のための 2009年編曲) 第1楽章:アレグロ・モデラート 第2楽章:アンダンテ 第3楽章:スケルツォ アレグロ・ヴィヴァーチェ 第4楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ バーゼル室内管弦楽団 ハインツ・ホリガー(指揮) 録音時期:2020年8月22日、2022年3月1-3日 録音場所:スイス、バーゼル、ドン・ボスコ音楽文化センター 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)Powered by HMV