東大に合格すれば、その後の人生が保証されるという時代は完全に終わった。大企業に入れば、それで一生安泰という時代も過ぎ去った。2021年秋から東京大学工学部で開講されているアントレプレナーシップ教育デザイン寄付講座には、聴講生を含め多数の学生が集まり、教室は熱気にあふれている。この講座では、自ら会社を立ち上げ、事業を展開する起業家たちが多数講師として登壇した。体験に裏打ちされたその言葉は、刺激に満ちている。「北極星というか、何をやりたいかということがはっきり見つかっていればそれをずっと持っておくことで迷わずに進める」「未来に旗を立てていき、そこから逆算して1年、1ヵ月、1日単位で何が起こるか計算していく」「皆んなが失敗を恐れずにゼロイチでどんどん会社を立ち上げて、世の中に失敗が溢れている状況になれば、失敗して恥ずかしいなんて感覚はなくなるんじゃないか」「結局モノを言うのは粘り強さとか、諦めの悪さとか、そういう要素」「自分のパッションに近いところで、いかに勝ち筋を見つけるか」敷かれたレールの上を走るだけでは、見えてこない。自分の気持ちに忠実に、泥臭く、粘り強く、失敗を恐れず進むしかない。起業の先人たちは、そう伝えている。東京大学の藤井輝夫総長も、2022年度の入学式挨拶で起業支援にかなりの時間を割くなど、大学を挙げて後押ししている。いま、東大でもっとも熱い学生たちが集まる、熱い講義の内容を一冊にまとめた、東大版「白熱教室」。序章 学びのギアチェンジの先に人生を変える発想がある東京大学大学院工学系研究科 坂田一郎教授第1講 20年先の未来からさかのぼって、いまを考える株式会社ビジョンケア 高橋政代社長第2講 「何をしたいか」という北極星が見えていれば迷わず進めるマイクロ波化学株式会社 吉野巌社長第3講 現状の外側に立つ思考ができれば未来が見える炭素回収技術研究機構 村木風海機構長第4講 起業というジョブキャリア、生き方は幸福度が高いSHOWROOM株式会社 前田裕二社長第5講 成長市場・アフリカで徹底して顧客ニーズを探るWASSHA株式会社 秋田智司社長第6講 UXの視点がなければどんなビジネスもうまくいかない株式会社ビービット執行役員CCO 藤井保文氏第7講 自分のパッションに近いところで勝ち筋を見つける株式会社ソラコム 玉川憲社長/トレジャーデータ 太田一樹CEO第8講 経営者としての「俯瞰力」を磨こう株式会社経営共創基盤 共同経営者・取締役CFO 望月愛子氏第9講 成功のためにもっとも必要なのは逆境に耐える力Issin株式会社 程涛社長第10講 日本から世界に飛び出すスタートアップを東京大学エッジキャピタルパートナーズ・郷治友孝代表取締役社長CEO寄付企業からのメッセージーーKDDI株式会社 事業創造本部副本部長 中馬和彦Afterwards--東大生たちはなにを感じたか