ストラヴィンスキーからチャイコフスキーへ。深い敬意と愛に満ちたオマージュユロフスキー指揮LPOのストラヴィンスキー・シリーズ第2弾の登場。チャイコフスキーゆかりの作品がプログラムされています。 1913年初演の『春の祭典』で衝撃的成功を収めたストラヴィンスキーは、チャイコフスキー[1840-1893]のことを熱烈に崇拝していました。1921年にはディアギレフの依頼でチャイコフスキーの『眠りの森の美女』の2曲(チャイコフスキーが削除し、チャイコフスキー自身のオーケストレーションは失われていた)をオーケストレーション、さらに1941年にも『青い鳥のパ・ド・ドゥ』の縮小オーケストラ版を作りました。これがどれもまるでチャイコフスキー本人が手がけたような出来上がり。ストラヴィンスキーのチャイコフスキーへの深い敬愛の思いを感じます。 1927年、ストラヴィンスキーは舞踏家のイダ・ルビンシテインに、チャイコフスキーの音楽にヒントを得たバレエを作ってはどうかと持ち掛けられます。ストラヴィンスキーはただちにそれを受け入れ、チャイコフスキーのピアノ独奏曲や歌曲からメロディやモティーフを選び、バレエの音楽を作っていきました。チャイコフスキーの素材を非常に愛情深く扱い、チャイコフスキーらしさを失わず、同時にストラヴィンスキー独自のサウンドも随所に感じられるような作品です。バレエの台本のもとになったのは、アンデルセンの童話「氷の乙女(妖精)」。少年が赤ん坊のころに氷の妖精に魔法のキスをされ、成長して結婚する段になって、結婚式前夜に永遠に女王に連れ去られてしまうという内容。チャイコフスキーのスイス人の少年ルディが赤ん坊の頃に氷の妖精に魔法のキスをされ、その後結婚式の前夜に永遠に連れ去られてしまうという話。ストラヴィンスキーは「ミューズは、チャイコフスキーにも同様に運命のキスをし、その神秘的な刻印は、この偉大な芸術家のすべての作品に感じられた」という非常に意味深な発言をしています。 バレエのストーリーは以下のとおり。第1場:山の嵐で母親とはぐれた子供が、氷の妖精に見つかってキスをされる。その後、彼は村人たちに助けられる。第2場:子供が青年に成長し、婚約者と一緒に村の祭りを楽しんでいる。氷の妖精は変装して近づき、彼に運勢を伝える。第3場:結婚を控えた青年がブライダルダンスを始めるが、婚約者に扮した氷の妖精が、青年を永遠の住処に連れ去る。第4場:再び氷の妖精が彼の足にキスをして、永遠の愛を誓う。 終盤の音楽は「氷の妖精」の存在にもかかわらず、冷たさを感じさせない、静かで控えめなものとなっています。 ストラヴィンスキーはチャイコフスキーのことを心から賞賛していました。チャイコフスキーの音を通して、ストラヴィンスキーは、幼少期に過ごしたサンクト・ペテルブルク、そしてロシアを感じていたのかもしれません。チャイコフスキーへの深い思いを感じる作品を、ユロフスキーとLPOがたっぷりに響かせています。【シリーズについて】ロンドン・フィルの名誉指揮者(2021〜)となったユロフスキー(1972生まれ)。2018年(当時は首席指揮者、2008〜2021)に1年間かけて行った、ストラヴィンスキー・フェスティヴァル「Changing Faces」シリーズを、全3巻でリリースするシリーズです。この演奏会シリーズは、ストラヴィンスキーの作品を作曲年代順に演奏することにより、ストラヴィンスキーの作曲の変遷をリアルに感じることができる好企画で、現地でも評判でした。(輸入元情報)【収録情報】● チャイコフスキー/ストラヴィンスキー編:『眠りの森の美女』 Op.66より3つの小品 青い鳥のパ・ド・ドゥ オーロラのヴァリアシオン 間奏曲● ストラヴィンスキー:妖精の口づけ(4場から成るバレエ) 第1場:プロローグ〜嵐の中の子守歌 第2場:村の祭り 第3場:工場にて パ・ド・ドゥ:アントレ〜アダージョ〜ヴァリアシオン〜コーダ〜情景 第4場:エピローグ(永遠の国の子守歌) ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 ヴラディーミル・ユロフスキー(指揮) 録音時期:2018年3月17日 録音場所:ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール 録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)Powered by HMV