葛飾区は東京都の東部に位置し、区域の全体が荒川の外側にある唯一の区である。区の西部は海抜ゼロメートル地帯で、海抜マイナス1メートルもしくはそれよりも低い場所もある。一方、区の東部は海抜1〜2.5メートルの範囲となっている。都内で唯一埼玉県と千葉県の両方に隣接する区でもあり、現在の人口は42万人を数える。「葛飾」の名称は現在の葛飾区の地域に固有のものではなく、下総国葛飾郡一帯の広大な地の総称であった。また、現在の葛飾区一帯や江戸川区の付近は近世まで「葛西(葛飾の西部の意)」の名称で呼ばれていた地域であるが、現在では一般に江戸川区南部一帯の地域を指すにとどまっている。一方、東京23区で4番目の広さを持つ江戸川区は、区域の西側を荒川と中川で区切られ、東側は江戸川・旧江戸川で千葉県浦安市と市川市に接している。人口は現在、70万人を超えるまでに増大している小松菜発祥の地としても知られており、江戸幕府第8代将軍徳川吉宗の鷹狩の際に献上され、地名から小松菜と命名されたと伝えられている。区内の農業産出額は23区最大であり、小松菜のほか、鹿骨などでは花卉栽培が盛んである。特に毎年7月に台東区入谷で開催される朝顔市に出荷されるアサガオの約6割は江戸川区産である。かつては金魚養殖が盛んで、愛知県の弥富市、奈良県の大和郡山市とともに江戸川は金魚の三大産地として知られているが、今日では養殖池の多くは区外に移転している。本書は東京の東部に位置する両区内の詳細地図をもとに、その歴史をたどるものである。