ハルモニアムンディのベートーヴェン・シリーズエラス=カサドによる第九の登場!ベズイデンホウト参加の『合唱幻想曲』も収録2020年ベートーヴェン・イヤーにあわせてハルモニアムンディが展開しているベートーヴェン・シリーズ、第九の登場。指揮は近年充実著しいパブロ・エラス=カサド、管弦楽はフライブルク・バロック・オーケストラ。ソリスト陣も第一線で活躍する顔ぶれです。合唱は2011年設立で既に世界を席巻している団体、チューリッヒ・ジング・アカデミー。期待が高まるというもの。 『第九』は、冒頭からストレートに一気呵成にたたみかけ、刻み込んでくる、パワーに満ちた演奏。これまでに様々な歴史的名演が存在する、特殊ともいえる作品のひとつですが、エラス=カサドは今まさにこの作品が書かれたかのように、新鮮に、大胆にストレートに譜面を響かせています。演奏時間は61分13秒(I.13:35、II.13:32、III.12:07、IV.21:59)。エネルギッシュでありながら、颯爽とした演奏に、今あらためての真の第九像を観る感すらあります。 終楽章冒頭もまさに「プレスト」。しかしすべてのテンポ設定は楽譜に書かれたもので、ここでも不自然さやぎこちなさはまったくありません。エラス=カサドが、これまでの慣習にとらわれることなく、まっさらな目で緻密に譜面の検証を重ねたうえでの大胆な演奏となっております。「歓喜の歌」と重なる管弦楽も実にぴちぴちと喜びに満ちており、見事です。管弦楽、ソリスト、合唱すべてが輝かしく混然一体となって炸裂した、実に新鮮なパワーに満ちた、鮮烈な第九の登場といえましょう。 合唱幻想曲も、ベズイデンホウトのソロの迫真の説得力と迫力に思わず聴き入ってしまいます。器楽とのアンサンブルも絶妙。ふとした表情の変化や、影から光への移行などを、ベズイデンホウトもエラス=カサドの歌に満ちた統率が光る管弦楽ももらさずとらえており、ベートーヴェンの筆に込められた創造性が響き渡ります。ベズイデンホウトはこの作品について、「1808年のベートーヴェン自身がピアノ独奏を担当した演奏会は彼にとって大いなる心の傷だったろう。それは既にかなり進行していた難聴の中での、ある種の白鳥の歌としてこの演奏会に臨んでいたはず。その演奏会では冒頭部分は即興で演奏されたが、おそらくこれはベートーヴェンがプロのヴィルトゥオーゾ演奏家として演奏したごく最後の記録であろう。ベートーヴェンは聴衆に『これはヴィルトゥオーゾ・ピアニストとしての最後の証言となるだろう。これからはあなた方に純粋に音楽を提供していくことになる』と伝えている。」と述べていますが、まさにこの演奏は、天才ベズイデンホウトの、過去の偉大なる天才ピアニストでもあったベートーヴェンへの敬意に満ちたオマージュであり、同時に腕前の勝負を挑む挑戦状ともいえるような、意欲的な演奏だといえるでしょう。ベズイデンホウトがさらなる飛躍と深化を遂げ、持ち前の音楽性に加え、力強さも増してきていることを感じる力演です。ブックレットには、ハルモニアムンディ社長のクリスティアン・ジラルダン氏による、「歓喜の歌」についての興味深い考察も掲載されております。注目盤です!(輸入元情報)【収録情報】ベートーヴェン:1. 交響曲第9番ニ短調 op.125『合唱』2. 合唱幻想曲 ハ短調 op.80 クリスティアン・ベズイデンホウト(フォルテピアノ:2) クリスティアーネ・カルク(ソプラノ) ゾフィー・ハルムセン(アルト) ヴェルナー・ギューラ(テノール) フロリアン・ベッシュ(バス) チューリッヒ・ジング・アカデミー フライブルク・バロック・オーケストラ パブロ・エラス=カサド(指揮) 録音時期:2019年11月 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)Powered by HMV