才気煥発の俊英スミルノフと巨匠ホリガーの刺激的な共演!ボードレールが描いた東の地、彼方との美しい接触ラロの協奏曲をメインに輝かしい色彩で展開される、19世紀末のフランスとロシアをつなぐ流麗な音のつづれ織りラロのヴァイオリン協奏曲第4番『ロシア協奏曲』と、この曲でロシアの旋律を使うにあたってラロが参照したリムスキー=コルサコフ編纂の『100のロシア民謡』を中心にして、19世紀末における東西の音楽の橋渡しをテーマに、絶妙な選曲でこまやかに作りこまれたアルバムです。歌や民謡をヴァイオリン編曲版で演奏し、ヴァイオリンの協奏作品と組み合わせることで、音色の統一感もありつつ様々な音楽言語が織り込まれた幻想的な世界を生み出しています。 アルバムの扉を開く1曲目『旅へのいざない』は、東方の地を幻想的に描いたボードレールのたいへん美しい韻文詩に基づく歌曲。もともとはピアノ伴奏ですがデュパルク自身が管弦楽伴奏版も書いており、当盤ではそれをもとに歌のパートをヴァイオリンで演奏しています。原曲がピアノとは思えない繊細なオーケストレーションと夢みるような歌の旋律が、聴く者を彼の地へといざないます。 スペインの血を引くラロは、有名な『スペイン交響曲』(ヴァイオリン協奏曲第2番)以外でもスペインの色彩をもつ音楽を書いていて、協奏曲第1番もそのひとつ。この作品と響き合うものとして、同じくスペインの名手サラサーテのために書かれスペインの響きをもつ、サン=サーンスの『序奏とロンド・カプリチオーソ』が選ばれています。そして『ロシア協奏曲』は、印象的に使われたロシア民謡の原曲を大胆に挟み込むかたちで演奏。各々の作品が繋がっていくことで、音楽の味わいがぐっと深まっていきます。 最後を締めくくるのはムソルグスキーの歌曲『愛しいサーヴィシナ』。ロシア的な5拍子による物悲しくも美しい歌を、低音中心の印象的な編曲で奏でています。 ドミトリー・スミルノフは古楽から現代まで幅広くこなす若き俊英ヴァイオリニスト。2018年にバーゼルで自ら設立した室内アンサンブル「カメラータ・ライン」では実験音楽や映画音楽まで手掛けるという多彩な音楽家です。今作ではロマン派作品のガット弦での演奏に挑戦、また巧妙なプログラミングと鮮やかな編曲も彼によるもの。フランス・ロマン派の色彩に負けず、しかも編成にまでこだわった編曲はアルバムのハイライトとも言え、自身で演奏することによりさらに迫真の表情が生まれています。巨匠ホリガーにとっても刺激的で新鮮なプロジェクトだったようで、非常にレベルの高い、真に交響的な演奏が繰り広げられています。(輸入元情報)【収録情報】1. デュパルク:旅へのいざない〜ヴァイオリンと管弦楽のための編曲版2. ラロ:ヴァイオリン協奏曲第1番ヘ長調 Op.203. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.284. ラロ:ヴァイオリン協奏曲第4番ト短調 Op.29『ロシア協奏曲』より第1楽章5. リムスキー=コルサコフ:100のロシア民謡 Op.24より『エヴラシェヴォ村の鐘が鳴る』〜弦楽合奏のための編曲版6. ラロ:ヴァイオリン協奏曲第4番ト短調 Op.29『ロシア協奏曲』より第2〜4楽章7. リムスキー=コルサコフ:100のロシア民謡 Op.24より『ノヴゴロドに鳴り響く鐘』〜ヴァイオリン、バセットホルン、チェレスタ、ハープ、チェロのための編曲版8. ムソルグスキー:愛しいサーヴィシナ〜ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、クラリネット、ホルン、ファゴットのための編曲版 ドミトリー・スミルノフ(ヴァイオリン、編曲:5,7,8) バーゼル室内管弦楽団 ハインツ・ホリガー(指揮) 録音時期:2022年2月23-25日 録音亜b所:スイス、ドン・ボスコ・バーゼル 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)Powered by HMV