親から継いだ社長の椅子は、地獄への入り口だったーー裁判にまで発展した親子間承継、7億の負債とともに2代目社長に就任。男はいかにして苦難の事業承継を乗り越え、東証TOKYO PRO Market上場までたどり着いたのかーー昨今、中小企業における事業承継問題は、日本の大きな課題となっています。なかでも全体の7割以上を占める親子間承継をいかにしてスムーズに行うかが大きなポイントとなっていますが、これがなかなか一筋縄ではいきません。事業承継では現社長と次期社長間の円滑なコミュニケーションが欠かせませんが二者間が親子の場合、ミスコミュニケーションが起こりやすくなったり、会社の負債を含んだ相続問題や経営者親族への資産引継ぎなど、親子間の承継だからこそ起こり得るさまざまなトラブルが存在したりするのです。本書の著者は建築資材の製造販売や総合建設を行う会社を父親から引き継いだ2代目社長です。やはりスムーズな事業承継というわけにはいかず、両親との関係性は悪化の一途をたどりました。そして承継した翌年の春、著者の両親は古株社員を数人引き連れ、同じ社名で会社を起こしたのです。4年間に及ぶ親子間の泥沼裁判の末、社名は取り戻しましたが、代償として両親には高額の退職金を支払う結果となりました。もともとの負債に加えこの退職金の支払いにより会社の経営はさらに厳しくなったのです。しかし著者は先細りしていた主要事業の転換を契機に企業成長の糸口をつかみます。さらに地元にこだわっていた父親とは反対に商圏を全国に拡げ東京進出を図り、ついには東証TOKYO PRO Market上場を果たすに至りました。本書では、著者が親子間の承継トラブルという苦難を乗り越え、会社を成長へと導いた軌跡をたどりながら、一度こじれると泥沼化しやすい親子間承継の難しさ、そして、経営者としてのあるべき姿について記しています。事業承継に悩みを抱える経営者や後継者にとって、困難をエネルギーに変えて前へ踏み出す勇気を与えてくれる一冊です。