モーツァルト研究&演奏の第一人者がモーツァルト愛用のフォルテピアノで完成させたソナタ全曲録音モーツァルト研究の第一人者として知られるピアニスト、ロバート・レヴィンが、モーツァルトのピアノ・ソナタをモーツァルト自身のフォルテピアノ(アントン・ヴァルター、1782年)で初めて全曲録音しました。この7枚組ボックス・セットには、モーツァルトの未完の断片も収録されていますが、ここではレヴィン自身が、モーツァルトのイディオムと当時の作曲形式を考慮して完成させています。レヴィンのピアノ・ソナタの解釈は、ウィーン楽派の演奏慣習に基づき、即興的な要素や繰り返しの装飾が取り入れられています。 100ページに及ぶブックレット(ドイツ語、英語)にはモーツァルテウムのディレクターでモーツァルトの専門家であるウルリヒ・ライジンガーによるソナタと楽器についてのエッセー、演奏者レヴィンの記録、モーツァルトの自筆譜などが掲載されています。「古典的なピリオド音楽の解釈に際しての重要な問題のひとつは、繰り返しの本当の意味とは何かということである。もちろん、狭義には「前に弾いたものに戻って弾く」ということ。しかし、18世紀の演奏にはリピートの装飾が重要な要素であったことが分かっている。モーツァルトのソナタを見ると、この問題が彼の発想の中心になっていることがわかる」とレヴィンは説明します。 モーツァルトに大きな影響を与えたC.P.E.バッハは1759年に出版した『さまざまな繰り返しのあるソナタ』の序文で、「繰り返しの装飾は現代では不可欠」「すべての演奏者に期待される」と述べています。レヴィンはその記述をモーツァルトのソナタに応用し、繰り返しを自由に扱い、旋律、伴奏、そして必要に応じて和声の細部が変更され、短いインターポレーション(音楽のフレーズの間に追加される素材)さえも使用しています。 また、モーツァルトが完成させることのなかったソナタの楽章を完成させるなど、歴史的なアプローチでソナタを演奏。レヴィンは、モーツァルトの語法や当時の音楽用語に対する深い知識と理解をもって、この断片の作曲に取り組んでいます。 ソナタ ハ長調 K.42(35a)について、レヴィンは次のように述べています。「この陽気な3拍子の断片は、25小節で途切れてしまい、主旋律と副旋律が残されたままになっている。この曲は、コーダへと続くシークエンスの始まりの部分で切れていることは明らかであろう。私の完成は、この楽章の高揚感と率直な性格を維持しようとするものだ。」 このフォルテピアノは、幅が約100cmと限られており、また、細部にもこだわりがあるため、木質感が際立ち、モーツァルトのソナタの特徴を透明感のある音で表現することができます。このピアノは、1782年にアントン・ガブリエル・ヴァルターによって製作されたものと思われ、モーツァルトの専門家でありモーツァルテウム館長のウルリッヒ・ライジンガーは、ライナーノートで「倍音に富んだ銀色の音と、現代のコンサートグランドピアノの音に比べて驚くほどはっきりした低音が特筆される」と説明しています。モーツァルトは1785年以降、このフォルテピアノを使用していました。(輸入元情報)【収録情報】Disc1モーツァルト:● ソナタ楽章 ハ長調 K.42● ピアノ・ソナタ第1番ハ長調 K.279● ピアノ・ソナタ第2番ヘ長調 K.280● ピアノ・ソナタ第3番変ロ長調 K.281Disc2● ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調 K.282● ピアノ・ソナタ第5番ト長調 K.283● ピアノ・ソナタ第6番ニ長調 K.284『デュルニッツ』Disc3● ピアノ・ソナタ第7番ハ長調 K.309● ピアノ・ソナタ第8番ニ長調 K.311● ピアノ・ソナタ第9番イ短調 K.310Disc4● ソナタ楽章 変ロ長調 K.400● ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.330● ピアノ・ソナタ第11番イ長調 K.331『トルコ行進曲付き』Disc5● ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調 K.332● ピアノ・ソナタ第13番変ロ長調 K.333Disc6● 幻想曲 ハ短調 K.475● ピアノ・ソナタ第14番ハ短調 K.457● ピアノ・ソナタ第15番ヘ長調 K.533/494Disc7● ピアノ・ソナタ第16番ハ長調 K.545● ピアノ・ソナタ第17番変ロ長調 K.570● ピアノ・ソナタ第18番ニ長調 K.576● ソナタ楽章 ト短調 K.312(レヴィン補完) ロバート・レヴィン(フォルテピアノ) 録音時期:2017年2月、2018年2月 録音場所Powered by HMV