1890年代、民族叙事詩『カレワラ』などから題材を得て標題音楽の可能性を追求するラディカルなナショナリストだったシベリウスが、なぜ、交響曲という普遍的で抽象度の高い音楽表現の追求に向かっていったのか。本スコアの解説冒頭は、歴史的状況も踏まえたシベリウス交響曲論が展開されており、貴重。各楽章の楽曲解説では、さまざまな素材の展開処理、調と旋法を融合させた独自の音楽的思考、劇的なクライマックス形成などを、適宜譜例を交えながら詳細に論じる。初演から圧倒的な好評を博した第1番の魅力を、明快に解きほぐして興趣が尽きない。第1楽章 序奏部:アンダンテ、マ・ノン・トロッポ、2/2拍子 主部:アレグロ・エネルジコ、ホ短調、6/4拍子第2楽章 アンダンテ(マ・ノン・トロッポ・レント)、変ホ長調、2/2拍子第3楽章 アレグロ、ハ長調、3/4拍子第4楽章 序奏部:アンダンテ、2/2拍子 主部:アレグロ・モルト、2/4拍子、ホ短調