『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』-モーツァルトとダ・ポンテによるこれら三作品は、ヨーロッパ音楽劇の不朽の名作である。啓蒙主義の時代、芸術を理解するひとりの皇帝が現われ、その庇護のもとに二人の異質な芸術家による共同作品が成立した。本書は、この二人の出会いから、さまざまな抵抗と妨害にあいながらも作品が完成し上演されるまでの過程を描くとともに、作品そのものを論じる。さらに、十八世紀ウィーンのイタリア・オペラ界の人物事典も収録。著者はモーツァルトのオペラに造詣が深く、集積された歴史的資料に基づきつつ、自由濶達に論じていく。