「民族音楽学」は世界の多様な音楽文化を扱いながら、人間と音楽について考える学問。本書はこの民族音楽学の入門書。専門的な音楽の経験がなくても、音楽への知的な好奇心がある人に向けて編まれた。「民族」という語がついてはいるものの、民族音楽学は遠い異国の音楽だけを扱うものではなく、あらゆる音楽を扱う。本書は地域別・ジャンル別ではなく、むしろ複数の音楽文化を横断的に捉えられるような以下の視点を提示する。第一部「響きと身体」では身体、舞踊、書記性(楽譜)、言葉。第二部「伝承と政策」では、個人にとっての伝承、国家の政策、ユネスコ等の国際機関の関与。第三部「社会の中の音楽」ではマイノリティ、越境、アイデンティティ構築、知的所有権。最後に、「民族音楽学」という学問の現在までを示す。「リズム」「舞踊研究」「音組織」「採譜と分析」「資料としての楽器」「フィールドワーク」「映像」の7つのコラムも読みごたえがある。はじめに 増野亜子響きと身体 1 音楽と身体 増野亜子 コラム1 リズム 寺田吉孝 2 音楽と舞踊 金光真理子 コラム2 舞踊の記譜と分析法 金光真理子 3 聴こえるものと見えるもの 谷正人 コラム3 音組織(音階) 谷正人 4 音・声・ことば 梶丸岳伝承と政策 5 伝統芸能の伝承ーー個人にとっての芸の伝承 小塩さとみ コラム4 楽譜・採譜・分析 小塩さとみ 6 無形文化遺産としての音楽 福岡正太 コラム5 資料としての楽器 福岡正太 7 無形文化財と韓国の伝統音楽 植村幸生社会の中の音楽 8 マイノリティ 寺田吉孝 コラム6 映像記録と録音 藤岡幹嗣 9 越境・ディアスポラ 早稲田みな子 コラム7 フィールドワーク 梶丸岳 10 ローカルとグローバル、アイデンティティ 高松晃子 11 グローバル化と著作権問題 塚田健一総括 12 民族音楽学への流れ 徳丸吉彦引用・参考文献 索引 あとがき 増野亜子、徳丸吉彦