ここ数年、米国や中国の巨大プラットフォームが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)によるデータを駆使したビジネスモデルの大改革に成功し、社会やビジネスモデルを抜本的に変革しています。日本の商社業界も、各社がデジタル化によるビジネスモデルの転換や新規ビジネスの開拓を死活的に重要な経営課題と認識して注力しています。本来的に商社のビジネスは、非常に広い地域・産業・人に接点を持ち、それを「つなぐ」ことを特徴としています。デジタルを活用することにより、商社の「つなぐ」機能が飛躍的に強化されれば、既存ビジネスの進化や新たなビジネスの創造に結び付けられます。日本の商社の団体である日本貿易会では、デジタルは各商社にとっての「競争領域」であると同時に、業界で知恵を結集して、デジタルを活用した共通のプラットフォームを作り出すという「協調領域」でもあるという仮説をたて、各社がデジタル化の推進に当たって直面している共通課題について共有化し、議論・研究するための「デジタル新時代と商社」特別研究会を立ち上げました。日本貿易会の主要会員商社13社が参加し、1年間にわたり活発な意見交換や研究活動を行った成果としてまとめたのが本書です。本書は、商社業界だけでなく、他業界のデジタル化推進の一助にもなる、各社の具体的な事例を紹介した実践的な内容となっています。商社のビジネスに関心をもつ学術界、学生の方々にも理解しやすく、大いに役に立つ内容です。