仕事の場とは、そこで使う道具、仕組み、システム、商品、部品、廃棄物といったモノの集合体といえます。これらのモノ群ともいえる「状況」が、人々の記憶力に影響を与えることがわかってきています。ビジネス心理学は、そのような「人々の置かれた状況」や他者との関係のなかで、人の思考や記憶、感情を把握し、1個人の能力の向上、2組織の仕組みの変革、3商品開発につなげようとするものです。 たとえば「購買行動を促すのは、品揃えの豊富さではなく配置の仕方であり、選択しやすいメリハリのある配列にすべきこと」「顧客の感情のバランスをとる(マイナス面をプラス面で補おうと考える)と売上が伸びる」「暖色系の空間にすると人の回転率が上がる」、あるいは「意志力は、行動の仕方を工夫することにより、鍛えられる」「目標を、方向とプロセスと成果で管理し、行動へと転換していく」など、変革のための改善行動がポイントとなります。 本書では、顧客対応から業務プロセスの改善まで、ビジネスを進めるなかで幅広く役立つ工夫や具体例を、マーケティング心理とマネジメント心理の解説を交えて紹介します。第1章 ビジネス心理学の原則「心(気持ち)が人を動かす」は本当か/ストレス対策を組織の変革へつなげる/仕事の「成幸」をめざそう!第2章 マーケティング心理 販売の心理:「欲求段階」に応じた接客/顧客満足を生む「期待マネジメント」/なぜ、つい買ってしまうのかサービスの心理:「匂い」が購買意欲を刺激する?/「色」がもたらす消費行動/「面倒」に感じる心理を購買行動に活かす営業の心理:「単純接触効果」のもつ力/法人顧客キーマンの「自己関与」/顧客の商品イメージを変えるには?広告の心理:恐怖感情をあおる販促戦略のリスク/シニア客を買う気にさせる「ストーリー」/人にものを聞くことができない男性心理第3章 マネジメント心理動機づけの心理:「動機」と「やる気」と「欲求」の相違点/先取り宣言(アファーメイション)で動機づけ能力開発の心理:メタファーによる怒りの自己コントロール/能力をどうやって診断・評価するのか