愛したひとはーー人形でした。 僕の一目惚れでした。無口な彼女と、たくさん話をしました。彼女は、毎日僕の帰りを待っていてくれました。食欲のない彼女のぶんも、一緒に冷やし中華を食べました。歩かない彼女を助手席に乗せて、海を見に行きました。僕が死んだら、一緒に棺に入る約束をしました。いいことのなかった50年の人生で、初めての幸せでした。色が白くて優しくて、彼女は、彼女はーーー愛したひとは、人形でした。ラブドールとの純愛を描いて大反響を読んだ表題作『星田一夫さんの幸福』のほか、母の介護に追われる女性が出会う奇跡『虚星の真実』、冴えないロートル漫画家の不思議体験『厭星漫画家』の計3篇を収録! 【編集担当からのおすすめ情報】 表題作の『星田一夫さんの幸福』は、雑誌掲載時から「泣ける」「これまでに読んだシリーズの中で一番せつない」と大反響を呼びました。主人公“星田さん”の不器用で一途な愛情は、特に女性読者の方から熱烈な支持をいただきました。大好評につき、本来の予定を繰り上げての単行本収録です!