2020年、春新型コロナウイルスの蔓延に伴い、初のソロアルバムを披露する場であった全国ツアー「宮本、独歩。」が無念の中止。さらに緊急事態宣言が発令され、自粛生活を余儀なくされる中、宮本浩次は独り、自身の作業場で歌い続けていた。エレファントカシマシとしてデビューするよりもさらに前、歌が大好きな少年宮本浩次が親しんでいた楽曲を弾き語る。1日1曲をカバーする、と自身に課した。その作業に没入する中、オリジナルの歌のもつ力、そして歌に登場する主人公たちを愛するあまり、時に号泣しながら宮本は歌っていたという。緊急事態宣言が明け、宮本は録りためた弾き語り音源から精選した10数曲を携えて、信頼するプロデューサー小林武史氏のもとを訪れた。これを受け小林はわずか数日で、ほぼアルバム1枚分のアレンジを完成、歌に向かう宮本と小林の、極めて純粋でひたむきな意志に貫かれたコラボレーションとなった。さらに、宮本が大好きな歌と公言する「赤いスイートピー」を、やはり信頼を寄せる音楽プロデューサー蔦谷好位置氏にアレンジを依頼。こうして信頼する人たちと厳選と研鑽を重ね、カバーアルバム「ROMANCE」は形となっていった。収められた楽曲のオリジナルは、すべて女性が歌った楽曲。1リスナーだった少年時代の宮本が親しんだ楽曲から、今回新たに出会った楽曲までも含むが、いずれも宮本が愛してやまない楽曲が揃った。オリジナルの歌に最大限のリスペクトを払いながら、1曲1曲を歌い込んだこのカバーアルバムは、宮本浩次のもつ歌い手としての力、魅力が、最大限に発揮されたものとなり、プロデューサー陣のアレンジ、ミュージシャンの演奏と相まって、カバーアルバムの最高峰と呼べる作品となっている。宮本にとってはもちろん初のカバーアルバム。今年3月に発売したファースト・ソロアルバム「宮本、独歩。」には、30年を超えるバンドとしての活動では、やらなかったこと、できなかったことが詰まっていたが、その意味では本作もその延長線上にある。宮本浩次という、ひとりの歌い手として挑む、“カバーアルバム”30年を超えるキャリアにしての初挑戦であり、金字塔である。