クローチェによって描かれた幼いモーツァルトと姉ナンネルが並んで1つの鍵盤の前に座っている有名な「家族肖像画」があるように、4手のクラヴィーア演奏はモーツァルトにとって重要な役割を果たしていた。このジャンルは、モーツァルトによって最初の興隆を迎えたと言われている。2台ピアノ用の作品に比べると、家庭的な用途をもつものだけに、軽やかさ、楽しさが際立った作品が揃っている。本エディションでは、第1ピアノと第2ピアノを見開き別ページ(オンラインで公開している『新モーツァルト全集』はこの方式)にせず、スコアと同じように同一ページに上下に並べて掲載しているので、全体の構成をつかみやすくなっているのが大きな特長。収録曲はモーツァルトのピアノ音楽において頂点をなす楽曲のひとつでもある《ソナタKV497》、第1奏者と第2奏者が交互に扱われる《ソナタKV521》、精妙な細部の味わいがある《アンダンテと変奏曲KV501》。ソナタ Sonata KV497/ソナタ Sonata KV521/アンダンテと変奏曲 Andante with Variations KV501